講演会

「ロングライフデザインについて 深澤直人×ナガオカケンメイ」 3

D&DEPARTMENT

第3部 「故郷、山梨のロングライフデザイン」

山梨は『d design trave』の次号に向けて取材中で、深澤さんの故郷でもあります。そんな山梨について話をする前に深澤さんから少しだけ話しがありました。これからのデザインにはナガオカさんのようなプロデューサー視点、編集者視点が大切になってくると感じているそうです。もう個人のデザイナーが目立つ時代は終わったと言っていたのが印象に残っています。SNSが浸透してきた今、個人が浮き上がってくるのではなく、個人同士のつながりが浮き上がってくるのかもしれません。コミュニティや、考え方に共感する人たちと向き合った商売というものがところどころで発生してくる可能性がありますよね。

【こだわっちゃう文化】

日本の独特な経済感覚の話も、なるほどと思いました。それは報酬に関するもの。

いいものにはお金を払う。
いいサービスにはお金を払う。

これは普通のことですよね、海外でも当然です。
ただ、日本は

「これしかお金をもらってないのに、お金以上のことをやってしまう」

納得です。そんなことって確かにあります。
ですが、外国からしてみればそれは明らかに経済のルールを無視した行動。わずかしかお金を払えないならそのくらいの質を返すのが普通で、それは確かに合理的な考え方です。よくも悪くも割に合わないことをやってしまうのは日本の美学と言ってもいいかと思ってます。だからこそ難しいですね、簡単には答えはでそうにないです。他国を見習って合理的な経済活動をしたら、文化レベルは間違いなく落ちていくだろうし、かといっていつまでも「お金はもらってないけど満足いくまでやりまっせ」というのでは経済がまわらないし、それに職人的な文化が生き残っていくのは難しくなっていくのではないかとも思えてしまいます。なにがどうなれば改善するのか、答えはでてません。

【ロングライフデザインになっていくデザイン】

山梨の話は、それほどありませんでした。割とあっさりと終わって質疑応答です。その中で気になったものをいくつか。

まずロングライフデザインは「シンプル」を目指してデザインされたものではないということ。ミニマルとも違う、と。
社会にデザインがでていき、そこでもまれて結果的にデザインがロングライフになっていく、という感覚だそうです。そのデザインの芯となる部分だけが残されるようなイメージでしょうか。時代が移り変わっていくなかで余計な部分がとれて芯が残る、と。そんな視点で身の回りを見まわしてみるとおもしろそうです。

【自分で経験したことを信じる】

どうやったらプロデューサー的、編集者的な視点をもって活動できるのか、という質問だったと思います。
自分が経験したこと、経験したことからくるものを信じて語ることが大切だという話。人から聞いたものではなく、経験したものを自分で編集していかないとおもしろいものなど生まれない。
そういう考えかたがポイントだと熱く語っていました。
自分が経験したものを信じなくてどーするのかって思いました。そこだけは外さないようにしていこう!

【デザインのやり直し、お直し】

この先のデザインの方向性として、新しく何かを生み出すデザインというのはあまり求められなくなってくるかもしれないと感じているようでした。それよりも今あるもののデザインを時代に合わせて再考したり、直していくことのほうが多くなっていくだろうとのこと。そういう視点で周りを見れば、まだまだやらなければならないことは残されていると感じているようです。
一度、目新しいものから視線を外して、身の回りにあるモノを見直すことがこれから大切になっていくのでしょう。

「ロングライフデザインについて 深澤直人×ナガオカケンメイ」 1
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