日常

「実践アルファベット!」

2007年10月29日、小林章の欧文タイプ・セミナーの第2段が開催された。
副題は、「実践アルファベット!」。
書体デザイナーである小林章が、3人の若手デザイナーがつくったロゴを見ながら、ステージ上でロゴをブラッシュアップしていくというパフォーマンスからセミナーはスタートした。
当然、書体デザインという実用的なデザインとロゴデザインというシンボルをデザインする行為は違うものだという前提でだ。特にロゴデザインは、一目見て頭に残るデザインか、分かりやすいデザインかということが重要である場合が多いので、同じ「文字」を扱ってはいるがデザインを視る目は違う。
1人目のデザインでは、文字のカタチをコントロールするうえでのコツを聞くことができた。
アンカーポイントの調整ウデは水平・垂直に設定しておくと微調整しやすい。
左右のウデの長さは同じになるようにしておくのが望ましい。
以上の2点を基本に、臨機応変に対応すること。
細部を統一する。文字の角は丸いか、角張っているのかなど。
細部を詰めるときのポイントは、
「何か筆記具を持って文字を書くと想像してみる」
ということが有効だという。
例えば、すべての角が丸くなる筆記具、とか。
横棒がすべて反り返る筆記具、とか。
2人目では、スペーシングの調整が話題になった。
単語であれば、一文字同士の字間をつめたら、単語全体のバランスを再確認することが必要だという。そして、また気になる字間をつめたら、また全体のバランスをみる。部分をつめたら全体のバランスをみる、といったチェックを繰り返して最適なバランスにしていくことがポイントだ。
スペースのチェック方法でのコツは、まずA4いっぱいくらいに単語を拡大してプリントアウト。そうしたら上下をひっくり返したり、90度傾けたり、裏返しにしたりと様々に動かして字間をチェックするとおかしいところを発見しやすいという。
凝り固まった脳みそをリフレッシュさせて新鮮な目での判断を可能にする簡単なテクニックだ。
3人目は、ロゴ・エレメントの統一が大切という話になった。
ロゴの一部に特徴的なエレメントを設定したら、1回はそのエレメントをすべての文字に適用してみるといい。デザインの幅がそこから広がって行くかもしれない。
以上が第1部。かなり実践的な内容になっていて参加したかいがあった。
第2部はレクチャーだ。
「サンセリフ体がそれらしく見えるための微調整」と題した書体デザインの解説。
人の視覚に合わせた微調整の集積で書体は成り立っているということがよくわかる。ジオメトリック・サンセリフとはいえ、本当に幾何学的ではなく幾何学的に見えるようにデザインされているのだ。
人の眼にあわせた微調整が一番大切だという信念は「筆記具で書けないような文字の調整はしない」というこだわりにもみることができる。
文字は書くことからでてくるので、普段見慣れていないところを調整すると不自然な文字になるからだ。
第3部はトークセッションと質疑応答。
ここで気になった話題は書籍の背に表記する場合の注意事項。日本ではたまに見かける表記として英語を日本語の縦書きのように表記する方法。これは普通はしないのだという。とくに権威のあるものに対してこうした表記は避けるべきという。
デザインに関して迷ったら「何らかの筆記具で書いたようにデザインする」と考えてデザインを進めるのが良いらしい。
全編にわたって実践的な話が続いたのでかなりお得なセミナーだった。
小林章の語り口も暖かいものだったし、また次回があれば参加したいものだ。