「日本文化が持つパワー」にこだわり、日本文化を象る24の「型」を漢字一文字に集約させて象徴的な読みをつけて、いろは順に並べた構成になっている。
デザイナーが文章を書いているのでその言い回しが面白い。
例えば「似」の章には以下のような解説があり、基本的な解説からその応用的な解釈へと幅広く書かれている。
・本物「らしい」ところをよしとする感性。
・一部の特徴を拡大するところが「似ている」ことの境地。
・日本人は、借り物を自分流にアレンジしてしまう加工が大得意。
・対象より一歩手前で踏みとどまり、「にじみ・ぼかし」によって対象にせまる表現方法。
おもしろかったのは「字」の章。「かな」とふりがながついていた。
まず、日本語の複雑さについて再認識。一文字で意味を持つ漢字と一文字では意味を持たないひらがな、カタカナのほか、ローマ字も混ざる。3つの文字と2つの表記システムが混在した言語は世界一複雑と言われているのも納得できる。さらに漢字には音・訓があって、文章の主語・述語は入れ替えてもその意味するところはほとんど変わらないという特性もある。
こうしたことが可能なのは日本語が「視る」言語だからだともいう。日本語のオノマトペ(擬音)が多いのもそのせいらしい。単なる音も文字にして「視る」というわけだ。
それにしても、300ページほどあるので、けっこうな量だ。ただ、図版もわりと多いほうどと思うので読みやすい。
日本文化をデザインに活かしたいと考えているので、こうしてまとまっているのは、うれしい。ポイントは、研究者や文学者が書いているのではなく、現役のグラフィックデザイナーが書いているところだと思う。