日常

「ブックデザインにおけるフォント活用とDTPの今」

2007年11月11日、印刷博物館にておこなわれたエディトリアル・デザインについてのトークイベント。
出演は、編集者の太田克史、DTPディレクターの紺野慎一、デザイナーの坂野公一、祖父江慎。
デザイナーばかりではなく、編集、印刷会社それぞれの立場からの話を聞くことができた。
進行役は、紺野慎一。まずは「DTP」という単語の確認から。
一般的には「デスクトップパブリッシング」という工芸的なニュアンスで知られている。ただ、現場レベルでの印象は「デスクトッププリプレス」という工業的なシステムといったイメージらしい。コスト削減といった意味合いで導入しているということだろう。
実際は、情報を発信する側のやりたいことを実現するための「DTP」のはず。それが単なるコスト削減の便利なシステム程度の運用例が少なくないという。これはもったいない話だ。
いまではかなり、本文のビジュアルにこった著者や編集者もでてきているようで頼もしい。
情報発信者側に強い気持ちがあればDTPというのはいい道具になるだろう、これが全員に共通な意見だった。強い思いを持てば高機能なソフトウェアに振り回されずに本来のデザインワークもできるというもの。
デザイナーがソフトウェアをどのように使っているかも少し披露された。
祖父江慎は、さすがに無茶苦茶。本文にでてくる各平仮名を別々のフォントにして組み合わせるとかを合成フォントの特殊文字なんかを駆使して実現させたり。イメージ先行でどうやったらソフトの力で実現できるかを試行錯誤している。ソフトウェアを振り回している好例だ。
造本するときは、気に入っている案と気にいらない案の両方を進めることがコツだという。スタンダードをふまえつつも、はずしていくということか。
デザインに迷ったら強いデザインにしてみるといいという。無難なデザインにはいつでも戻ることができるから。
坂野公一は、インデザインの機能を使って印刷時のシミュレーションをしていた。一番上のレイヤーに紙色を設定して乗算にするのがその方法。
デザイナー視点に加えて編集/印刷側の視点もあると、話にリアリティがあっていいな。
コストや手間の削減は確かに大切だ。でも、やっぱり本来の工芸的な「DTP」が増えていかないとおもしろくない。
それには、編集者はもちろん著者も印刷会社も巻き込んで突き進むしかない。