日常

「動き」の設計

2008年6月24日、注目しているデザイン学校「ミームデザイン学校」の公開講座が銀座のアップルストアで開催された。
ミームとは文化意伝子とでも訳されようか、まあ、デザインの根本にある考え方であるとか、方法論を次世代に引き継ぎ、「正しいデザインの方法」を時代の流れの中でさらに洗練させていこう、といった主旨。
これは、その通りだと思う。デザインの業界にMacが登場してからというもの、ちょっとうまくソフトウェアを使いこなせればそれなりのデザインができてしまうし、いろんな雑誌や書籍も「デザインの方法」には触れずにソフトウェアのオペレーション話しばかり。これではデザイナーは育たないはずだもの。
今年開校した学校で、いろんな理由が重なって結局参加できなかった。ほんとはこういう熱いところには参加したいんだけどなあ。
今回の講師は木本佳子。『イマジナリー・ナンバーズ』という書籍で有名だし、メディア芸術祭にも作品を出品していたから知っている人も多いだろう。
プログラムが描き出す幻想的な文様だ。静止画、動画があり、動画をみていると宇宙のようだ。それか生命体か。
講義内容は、この作品がどのような仕組みで成り立っているのかを順序だてて解説する。
大前提として、これは「システムの設計」をしているのであって「絵」を描いているのではない、ということだった。
この作品の最小構成要素は「点」だ。その「点」の動きを制御することがひとつ。そして、その「点」が動きまわる環境を制御することがひとつ。このふたつがあれば基本的な文様が出現するわけだ。
つまりシステムの枠をデザインしているのである。このシステムの構造をとらえることがキーだ。
制御方法はいたってシンプル。「点」の動き方、その点がある場所にさしかかったときの反応などを決めるだけ。シンプルな命令の掛け合わせが、膨大な数の「点」の集合体となり、ある文様があらわれるというわけ。
当然、文様は事前にはわからない。
ルールをデザインする、枠を創っていくというのはデザインの根本にあるものだ。決して表面だけをつくるのではない。確かに表面が美しいのは大切だが、本来のデザインとはこうした「設計」にある。そんな根本的な講義だった。
これも、造形のひとつのあり方だ。どこか、グリッドシステムに通じるところもあり、パウル・クレーの面影も見える。
デザインの可能性のひとつだな、これは。