セミナー

UXとは何か(DESIGN IT! Talk)

~プロジェクトを通して考えるユーザーエクスペリエンス(UX)

こんなサブタイトルがついたセミナーが開催されました。
これから考えていかなければならないテーマです。
それにどんなジャンルのデザインでも、この先は必要になってくる考え方だと思ってます。

この「DESIGN IT! Talk」は今回がなんと第1回目。もっとやっているのかと思っていた。
その記念すべき第1回目のスピーカーは、安藤幸央さんと江渡浩一郎さんの両名。まずは両氏のそれぞれが講演して、その後は司会を交えた3人でのディスカッションという流れ。

とりあえずおもしろいと思ったことをまとめておきます。

講演1:安藤 幸央「プロトタイピング技法とUXの改善」

UXというのはまだまだ一般的に認知されていないので、その言葉のイメージから定義していく話の流れ。
コストと技術と有用性を考慮して、ユーザーの満足度を上げていくことがUXだという話です。このあたりは人それぞれ思うところがいろいろありそうですね。自分としては
「文脈全体を考えてユーザーによりよい経験を与えるようにする考え方」
だと思っています。

UXを考えるときには3つのことを同時に考えるようにしたほうがいいとのこと。

  • 有用性
  • 技術的実現性
  • 経済的実現性

そしてUXの実現に向けて大切にすべきことは大きく次の3つ。

  • 観察すること
  • 慣れに甘んじない
  • 無駄を省きすぎない

「慣れの見極め」と「無駄を省きすぎない」というのはユーザー理解の経験がなせる技のようです。
なかでも観察することの重要性を訴えていました。ユーザーが使っているところをよく観察することで改善点が見えてくるという。
例えば、iPhoneアプリを作るのなら、iPhoneを使っている人をよくみれば良い、そこにヒントが隠されている、ということ。

総合的なサービスでUXを実践している例としてリッツ・カールトンのスタッフが持ち歩いている「クレド・カード」が紹介されていました。
これいいな。
会社の理念が書かれているカードをいつでも携帯して、行動に迷った時にそのカードを観て、理念に立ち戻って判断をくだす。すると迷うことが減り、即決断することができる。だから一貫した上質なサービスが実践できているのだとか。
なにか迷ったときに原点から考え直すのが一番ですね。それがビジョンというものなんでしょう。

もうひとつ、iPad APPでUXがすぐれている事例で気になったものがあった。
「iA Writer」。
iPad用のテキストエディターです。
文章を書くということに特化したUIを実現していて、カーソル移動や単語間移動のキーボードを装備し、文章を表示するエリアも適度に少なく、ユーザーへの負荷を減らしています。これはツイッター140文字も100ツイート積み重なれば14000文字の文章になるという道理。
さらにデータはDropboxで共有できるので、クラウドでいつでも執筆可能。
アプリケーションのUIだけではなく、ユーザーの「書く」という行為をも考えたデザイン事例として理解しやすかったです。
これからのデザインは、こうしたユーザーの行為そのものをデザインするという総合的なデザインの考え方が必要なんでしょう。

iA Writer 1.0.2(iOS 4.0 テスト済み)(¥600) for iPad

iPad 互換 iOS 3.2 以降が必要

iA Writer 1.0.2(iOS 4.0 テスト済み)
カテゴリ: 仕事効率化
価格: ¥600 App
更新: 2010/11/11

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あとは「ペルソナ」を使うということも推奨されていました。
ペルソナという具体的な人物像を想定することで、作り手もクライアントも同じ方向を見て、開発を進めやすいというメリットがあるのだとか。
つまり、関係者全員の意識と目標を統一できる。これは多分野にまたがったり、複数の部署で仕事を進めるときに有効そうだと感じました。

プロジェクトを進めるうえでは「ペーパープロトタイピング」というものも有効らしい。
これはUIのすべてを紙で作って、実際に紙を指差し操作ながらユーザーテストを行うというもの。
やっている本人たちはマジメなんだけど、外からみたら笑える光景かもしれないですね、が、コストもかからず、時間もそれほどかからない。紙に手で描いたりするので、できあがりすぎない、完成しすぎている感じを与えないという、見ためからは測り知れないメリットがありそうだということは伝わりました。

これからは、UXの実践においては何よりも観察することを意識したい。
講演を聞いていなくても以下の資料から多くのことが読み取れると思います。

関連資料
プロトタイピング技法とUXの改善

講演2:江渡 浩一郎「メディアアートでUXは成立するか?」

今度はメディアアートを手がけてきた人の話を聞くことができた。メディアアートから見たUXの定義は、ユーザー体験を中心にしたUIの実装ということになるようです。ちなみに、アートではユーザーという言葉は使わないそう。お客さまとか観客ということになるらしい。

メディアアートでは「メディア・スペシフィック」を意識することが大切。
それは、その媒体(メディア)でなければできない表現とはなにか、を考えること。
逆に表現から考えていって、メディアに落とし込むということもできそう。

メディアアートが目指す作品とは、人と人をつなぐもの、観客も作品のコンテンツになるというものが理想だそうです。観客が関わって初めて作品が完成するような全体を通したストーリーを構築するのがメディアアートの醍醐味だと力説していました、熱い。
このストーリーで考えるというのはアートでなくても大切ですね。

関連資料
メディアアートでUXは成立するか?

トークセッション

来場者の事前質問を踏まえたディスカッション。
まずは以下の質問から。

●「UXプロジェクトでうまくいくパターンは?」
イームズが言っているように、とにかく多く繰り返せばいい、というのが王道なのかも、という答え。
シンプルだけど、効果は絶大。トライ・アンド・エラーですね。
あとは職域を越えてプロジェクトを進めることも大切だそう。UXを考えるにあたって、偏った考え方にならないようにするために、第三者の眼を入れるようにしたいということでしょう。

●「専門性、分業化が進んだ、どーするのか」
最終目的をひとつにする。
文字にして、明文化する。
そしてリーダーががんばって引っ張っていくしかない、とのこと。

ぶれないものを作るためには、ペルソナ手法がオススメだと言ってました。全体的にペルソナ手法おしです。
ペルソナを使うことでプロジェクトメンバーの負担は減るということです。

UXの面白い例として、Amazonと楽天のページを取り上げていました。
同じオンライン・ショッピングでもAmazonは物を買うことに特化したが、
楽天は買いものをエンターテイメントとして捉えた。
その違いがサイトのデザインに現れている、というもの。
ユーザーの経験としては、以下のように分けられそう。

  • Amazonはスマートに買いものができる。
  • 楽天は楽しい買いものができる。

どちらが正解かではなく目指すゴールの違いがサイトの設計に現れている、なるほどな例だと思いました。
これがUXまで考えたUIの実装ということなんでしょうか。

Appleもよく例にだされていました。
製品を箱から出すプロセスまで気にしてデザインされている。
箱を開けたときには、その商品がまず現れて手にとることができる。
買った人の経験を考えてデザインされているいい例だそうです。
だから「開封の儀」とかやりたくなってしまうのか、納得です。

UX実践にあたり、「思考のタガを外す」ことを意識しなければうまくいかないというアドバイスがありました。
そのための工夫として、以下をあげていたのでまとめ。

  • 文脈を意識して考えることが必要。
  • 経験が違う人同士をいろいろ組み合わせる。
  • いろんなものを見たり、聞いたりする。

今回のセミナーであいまいなイメージのあったUXが、だいぶしっかりとしたイメージになってきたと思いました。
プレゼンは、豊富な実在の例があったから分かりやすかったですし。

自分なりに感じたことをまとめてみると、
UXの考え方は、大きく視点を持って文脈を理解し、細かくユーザーを観察して、よりよいストーリーをデザインで実現させていくことなのかな、と。

また次回、セミナーがあるのなら参加したいと思いました。

日時:10/13(水)18:00~20:30(セッション後懇親会予定)
場所:東京 麹町(KDDIウェブコミュニケーションズ セミナールーム)http://www.kddi-webcommunications.co.jp/corporate/map.html
(有楽町線「麹町駅」徒歩2分 / 半蔵門線「半蔵門駅」徒歩4分 / JR線「四ッ谷駅」徒歩11分)
費用:3,000円

<div class=”AppInfo”><h2><span style=”color:rgb(0, 0, 255);”>iA Writer 1.0.2(iOS 4.0 テスト済み)(¥600) for iPad</span></h2><p>iPad 互換 iOS 3.2 以降が必要</p><p><img width=”75″ class=”alignleft” align=”left” src=”http://a1.phobos.apple.com/us/r1000/056/Purple/29/2e/7d/mzl.vpkvcweu.75×75-65.jpg”><strong>iA Writer 1.0.2(iOS 4.0 テスト済み)</strong><br>カテゴリ: 仕事効率化<br>価格: ¥600 <a rel=”nofollow” target=”_blank” href=”http://click.linksynergy.com/fs-bin/stat?id=CzoMg1hsNLg&offerid=94348&type=3&subid=0&tmpid=2192&RD_PARM1=http%253A%252F%252Fitunes.apple.com%252Fjp%252Fapp%252Fia-writer%252Fid392502056%253Fmt%253D8%2526uo%253D4%2526partnerId%253D30″><img src=”http://ax.phobos.apple.com.edgesuite.net/images/web/linkmaker/badge_appstore-sm.gif” alt=”App”></a><br>更新: 2010/11/11<br style=”clear:both;”></p><br><img src=”http://a1.phobos.apple.com/us/r1000/022/Purple/75/cf/84/mzl.ihbfqpgz.480×480-75.jpg” alt=”images” class=”portrait iPad”/><img src=”http://a1.phobos.apple.com/us/r1000/059/Purple/c2/1f/49/mzl.fbkcrvea.480×480-75.jpg” alt=”images” class=”landscape” width=”403.2″/></div>