日常

「ニッポンのデザイナー展」ギャラリートーク3

ここのところ、毎週1、2回「ニッポンのデザイナー展」が開催されているShiodome italiaに通っているなあ。
そして、土曜日も行ってきた。ギャラリートークの3回目。
ゲストは、兄弟で建築事務所を運営している建築家の納谷学・納谷新。プロダクト・デザイナーの塚本カナエ。
もはや恒例となったお仕事プレゼンから。
これがなかなか面白くて、おもいっきりそのデザイナーの色がでている。しかもそれぞれのデザイナーのものの捉え方が個性的で芯が通っているから聞いてて気持ちいい。
【塚本カナエ】
どうやら
「SOFT UNIVERSAL」というコンセプトが一本の軸になっているらしい。
「できるだけ、多くの人々が楽しんで使えること」という意味合い。
ユニバーサルというと「ユニバーサル・デザイン」というのがまず思い浮かぶけど、実際のところ「ユニバーサル・デザイン」ということできっちりとした概念はないらしい。和製英単語のような便宜上そう呼んでいるだけなんだとか。
他にもいくつかのデザイン軸をもっていた。
「そこはかとなさ」というかなり日本文化的なものだ。分かりやすくいうと「さりがなさ」みたいなもの。日本文化を代表する芸能「能」に観ることができる方法でもある。
さらに
「遊び心」というものもあり、日本的情緒感を取り入れたデザインもしている。
日本文化からきているデザイン要素としては、漆、家紋、寺、などがあった。日本に限らず、ヨーロッパ、北欧での活動も経験している彼女は、その土地がもつ文化からデザインの要素となる部分を抽出して形に落とし込んでいくのがウマイ。
「各土地の文化」の例として、イタリアをあげていた。イタリアは、土地のもつリソースを引き出して地場産業化するのがうまいらしい。その点は日本はまだまだ開発されていないという。日本文化の中から、デザイン要素を引き出して実践している彼女は、そういうところを目指しているのかもしれないな。
資料を作る上でのこだわりも聞くことが出来た。そのプロダクトのいろいろな使い方を提案する、見せてあげるということで、実際に使用しているシーンの写真を多く使うようにしているんだとか。なるほど、これは参考になる現場の意見だ。
仕事をするときに心がけているのは、「自分もその他の人も楽しくなければならない」ということだそう。単純なことだけど、大切なんだろうなこういうのは。
【納谷学・納谷新】
実際の建築物をどのようなコンセプトで製作してきたかという思考をそれぞれが語った。
その土地が持つ形を活かしたプロジェクトもあったりと、それぞれの物件が全く違う形状になっている。その考え方の多くに共通していたのは、「モジュール化」の概念だったように思う。
それぞれの機能が必要とする空間を、各空間ごとに考えて連結していくという方法。
クライアントの情報をもとに各空間を丁寧に考えていくことはもちろん、その連結の方法もしっかりと作り込んでいくというかなり論理的で丁寧なやりかたを貫いているようだ。
だからこそキモとなるのは、クライアントの情報。その情報は、クライアントの生活状況、好きな空間だけではなく、嫌いな部分をもあえてよく聞いていくことで設計を進めていくという。
クライアントの情報を引き出して編集し、形、空間に落とし込む力はすごいものがあると思う。
答えは一つではない、というがみてとれる。
その後の質問タイムでは、塚本さんに質問してみた。
「世界の各地で活動してきて感じた、各土地の文化からくるデザイン要素の違いと日本文化の中で注目するデザイン要素は?」というもの。
答えのひとつは「ロイヤルデザイン」。ヨーロッパの王室や日本の天皇家が持っているような伝統のデザインは、大きなものから小さなものまでデザイン様式が統一されていて特徴的なのだそう。また、その土地がもつ気候もデザインに関係してくるので見逃せないポイントという。
日本文化では、お寺、神社、襖絵などがおもしろいそう。
こうしたものを見つけるには、その場所に行ってその場所で観るのが一番いいそう。やっぱり実際のものを観て自分の経験値を上げていかないと、見つけ出すのは難しい。だから旅行が好きなんだとか。
いいものを観る経験ってのは必要だなあ。