日常

「TDC DAY 2008」

東京TDC賞の受賞者やゲストを迎えて「TDC DAY」が行なわれた。今年で8回目というが、全受賞者が登壇するのは本年度が初めてという。2つの対話と6つの講演で6時間45分という充実。
受賞作の制作背景などが語られたが、方法的な話はなかなかでてこなかった。中国の受賞作は、経済の発展と関連しているのか、パワーを感じる作品だったな。いい意味でアーティスティックなもので、情報を確実に伝えるデザインとはちょっと違うものだった。TDCの選考基準がアートよりなのかな。
ブラジル出身でイギリス在住のフェルナンド・デ・メーリョ・ヴァルガスの講演はなかなか方法的だった。「FRIDA」というタイプデザインシリーズが受賞作品だった。新聞の活字が見直されていて、各社独自のフォントをつくり出しているのが流行っている状況で、新聞用の活字としてデザインされたものだという。
まず、school regularというフォントをベースにトレペを使用して手書きでイメージを固めていく。そして、デジタル化して形をつめていき、実際の新聞に見立てたテスト紙面を作りこんでチェックしていくのだそうだ。このプロセスは、やはり万国共通だし、有効な方法なんだな。
「フォーム」に注目したデザイナーもいた。第1回ブックデザインを受賞した『フォルムラーレ・ゲシュタルテン』を企画・編集・デザインしたボリス・シェヴェージンガーだ。
「フォーム」とは申請書や注文書や管理所類のこと。アートとはまったく別の切り口で、実用そのもののデザイン。ボリスはそんな「実用」しかないフォームに美しさやストーリーを感じてこのプロジェクトにとりかかったという。確かに無駄がないシンプルなフォームはきれいだ。だが、残念ながら多くのフォームは無駄だらけで、本来なら情報を整理するはずのレイアウトが混乱している。そのフォームをデザインするうえで参考になるようなマニュアルとしても機能するようにデザインされたのがこの書籍になる。
このフォーム・デザインこそが、デザイナーの力を発揮できる分野だと思う。アーティスティックなポスターもいいが、実用的な解決が求められているところにこそデザイナーが関わる必要があると思う。こうした書籍が注目を集めるのは、いいことだ。
最後におこなわれた講演が印象的だった。ゲストは、服部一成、北川一成、佐藤卓の3人。受賞者は、服部と北川。両者ともアート色の強いデザインだ。
現代的な合理的なデザインもいいが、あえて直感を大切にしたデザインが受賞した経緯とあわせて話が展開された。「本当に合理的なデザインがいいのか?」「役にたたないけれど、大切なものがあるだろう」ということから、無駄にみえることこそ大切にしなければならないのではないか、という。
たしかに、そういう疑問はあるかもしれない。ただし、それは基本的な技術や思考がベースにあってのことだと思う。デザインの方法や技術をもたない者がこういった発想を持ってしまうと大変だ。
午後いっぱい、国際的なデザインの話を聞くことができる貴重な時間だった。
もっと方法的なことが聞きたかったが、受賞にまつわるフォーラムだからそれは仕方ないだろう。
これだけのメンツがそろう1日というのもめずらしい。