日常

「本について」

実

デザイナーの対談に行ってきた。
尊敬するデザイナーふたり、原研哉とナガオカケンメイの対談なので、これは外せない。
青山ブックセンター本店での行われた。原研哉著作『DESIGNING DESIGN』の発刊を記念してセッティングされた対談だ。
これは英語版になる。今回は、原研哉自身が海外に向けてデザインを語ったもので英語版といえどもこっちがオリジナルになるそう。
日本語版も発売されるらしいから、そっちに期待だ。
対談タイトルとして「本について」となっているけど、実際の対談は、この本についてだけではなかった。
広い意味で「本」を語っていた。
まず「推敲する」ことについて。
自分自身の考えをまとめるという点で大切なものとして認識しているそう。なぜなら、文章、言葉を練り直していくことが雑音だらけの思考を整理することにつながるからというのがその理由。
確かにヒトの集中力なんて長く続くものではないのだから、言葉に定着させて考えるというのは、思考をまとめるうえで有効な方法のひとつだ。
「デザイン」という考え方についても独特の主張があって、共感できるところが多かった。
デザインされたものが大切なのではなく、「デザイン」という概念が大事だという。その概念の基本的な意識のひとつとして「デザインは差違のコントロールである」と語った。原研哉自身は、必要最低限の差違のコントロールでデザインしたいともいう。それは原の最近のブックデザインを見ると、分かる。
気になる表現として、デザインを2通りに分けた時の呼び方がある。
「器としてのデザイン」
「飛び道具としてのデザイン」
もちろん原研哉は「器」のほうだ。
「飛び道具」というのもなんだか独特の表現でおもしろい。
「センスウェア」という物質の捉え方も刺激になった。
「媒介する物質=媒質」という考え方だ。
同じようなニュアンスでいうと「メディア」になる。ただし、話を聞くかぎりでは、なったく同じニュアンスではないようだ。もっと手触り感があるというか、身体への影響力が強いというか・・・。
無印良品についても熱く語っている。「ノーデザインだからシンプル」というのではなく「デザインしつくしたからこそシンプルに行きついた」という。けっしてデザインしていないという意味でのシンプルではないと強調していたのが印象的。
この「シンプル」には「見立て」という方法が使われているから、無印良品は日本的なるモノという印象が強いそうだ。なるほど、納得。
こうした無印良品のようなブランディングについてもチラリと触れていた。
キーワードは「未知化」。
一度理解されると、あきられてしまうから、常に未知なるものになるようにしていくいのがいいという。
「それで知ってるつもり? 実はこんな面もあるんだけど、知らなかったでしょ」
というわけだ。
日本的にいうと「無常」とでもいうのか、これは面白い方法だと思った。
今回は原研哉が主役だったからナガオカケンメイの話はそれほど出てこなかったのが残念。
実りの多い対談だった。