日常

「原研哉トークショー」

2008年6月1日、『白』の刊行を記念して原研哉のトークショーがあった。
この方の考え方は、好きでほとんどの部分に共感できるし、目指している方向と同じところがあるんだよな。
空白、Emptinessというコンセプトを「白」という概念でまとめた著作。この日本文化的なコンセプトは、世界に通じるデザイン・コンセプトだろう。
フォーカス・ポイントをつくらない、あいまいなまま物事を受け入れるキャパシティをもったエンプティネスという方法はローカルだからこそ、グローバルに通用する。
「シンプル」というエンプティと似たような概念が西洋にある。この二つはまったくの別物だと原はいう。確かにシンプルには深みがない。エンプティには物事を受け入れる器のような余地がある。それは無印良品を見れば、わかる。シンプルというよりも、エンプティ。日本人の美意識のルーツだ。
デザインについては、差違のコントロールである、と原は常々言ってきた。最小のコントロールでデザイン要素をレイアウトすればナチュラルなものができる。その結果が、原のエディトリアル・デザインの「白」だ。
この「白」についても、おもしろい捉え方をしている。ここでいう「白」は色ではない、と。「色がない」という意味の白、「白」という感じ方、という物理的な色ではないという考え方だ。「白という概念」があるんだということだろう。
これはウツ(空)の概念としても有名であり、日本文化の根っこにあたる重要なものだ。日本のコミュニケーションも、空白である「間」を大切にしている。
こうした色の文化は、世界に点在する文化の数だけあるのだろう。
古代の日本には「赤」「青」「白」「黒」という色意識しかなかったという話も気になった。
応えを呼び込む「間」をどうやって創るのか。
シンプルとはまったく違う文化を実践するにはどうするか。
まだ『白』を読んでいないが、ヒントはそこにあると思う。