前々からパウル・クレーの本がほしいと思いつつ古本で2万円以上というプレミアがついていてなかなか手がでない。と、「パウル・クレー展」が大丸でやっているという情報が。
で、行ってきた。大丸のミュージアムはエレベーターを乗り継がないとたどり着けないという不便な立地なんだけど、それでも過去何回か足を運んだ。ツボをついてくるんだよなあ、このミュージアムの企画展示。今回も「線を引くこと」「色を塗ること」という軸を立てて展開している。
会期の終了が近いこともあって人が多い。
クレーの日記から言葉を抜き出して、絵と一緒に展示されているのが良い感じ。
「線」に対して新たな可能性とか性質を追求するために様々な方法を試していたんだとか。「何を描こうか」というよりも「何に見えるか」というところを意識していたようだ。
「余分な分析的なものは切り捨て、大胆直截に本質そのものに迫る」パウル・クレーがいきついた極意のようだけど、実際に線画をみると子供が書くような絵とそっくりなんだよな、一部。考えてみるとそれは当たり前かもしれない。本質をズバッと絵にするのは子供なわけで、まあ、テクニックの未熟さもあるけど「余計な概念がない」というのが大きいかも。大人になってテクニックも概念もしっかりしてくると「本質ズバリ」がなかなかできなくなるのかもね。本質はあまり見ないで、ついついテクニックに頼るなんてありがちだし。
特に気に入った名言に
「創造の行為は、その過程に価値がある」
というものがある。
プロセスに重点をおいて、画材・筆の工夫はもちろん絵の具を盛り上げて乾いたあとにナイフで削りとったりといろいろやっていたらしい。近年まで、どうやって制作されたかわからなかった作品もあったほどだ。
アトリエは「実験室」なんだなあ、こういう考え方は好き。
例えば、「トナリテ」。もともと音楽用語らしく「音調、調整」などの意味。クレーは色彩による明暗の階調をコントロールして表現することの意味で使った。言ってみればグラデーションか。
「文字絵」。詩句をそのままアルファベットで書き入れて彩色する方法。色で感情を伝達するのは、今では研究が進んである程度体系化されているから、メッセージさえしっかりと意識できていれば難しくはないんだけど、この当時は相当の試行錯誤があったんだろうな。
「芸術とは目に見えるものの再現ではなく、見えるようにすることである」
という言葉が全体に通してかかっていて印象に残った。
やっぱり本買おう。
高いけど。
パウル・クレー展