日常

「紙の新しいコミュニケーションとデザインの可能性」

紙の専門商社・株式会社竹尾が毎春開催している「TAKEO PAPER SHOW」。このイベントを再編集した書籍『PAPER SHOW』が、刊行された。その刊行を記念して、同イベントのアートディレクターを務め、またクリエイターとしても参加した古平正義、平林奈緒美、水野学、編集として携わった菅付雅信の4名のトークショーが行われた。場所は青山ブックセンター。土曜日のことだ。
本のことやイベントのことはけっこうさらりとふれて、話題の中心は「デザイン」に移っていった。
イベントについては、これまでのペーパーショーが「紙の研究」であり、紙でどこまでできるかが試され尽くしたのではないかと感じたという。そこでこのペーパーショーでは、本来の紙の使用目的である大量生産できることを前提に企画されたという。だとすれば、書籍版の『PAPER SHOW』は実践的なことがまとめられているということになるのでお買い得かもしれない。
そんな感じでペーパーショー関係の話題もそこそこに、デザイナーが果たす役割とか、デザインについて話が進んでいく。
会場にデザイン関係の人が多かったからサービスしてくれたのかも。
今、デザイナーとクリエイティブディレクターの境目がなくなってきているという。デザイナーは言われたことをキレイにつくるとか、レイアウトできるとかそういうことではなく、その前の段階でどこまでツメることができるかが問われているのだとか。
何をいまさら、という感じだけど、業界的には意外にもそこまで考えることができる人はまだまだ少ないらしい。表面的な見え方だけを考える人が多いんだとか。
グラフィックデザインで言えば、最終的なアウトプットからイメージし、そこに使われる紙質までを考慮してデザインできる人はまれだということだ。
そしてもっと枠を広げて、このプロジェクトはそもそも紙なのか、またはwebがいいのかという判断までもするようになると、それはまさにクリエイティブ・ディレクターの領域になっていくのだろう。
単純にデザイナーといったときには、やはりそこまで考えたいものだ。
そして、アートとデザインの違いについても語っていた。この質問は多いそうだ。その定義は以下のようなもの。
アート  個人の表現
デザイン 仕事
かなり明快だ。確かに説得力はある。アートは何をやろうが自由だけど、デザインはクライアントが存在する。仕事の範囲内でなら遊ぶことも可能だが、お客さんがいる以上それは仕事だ。
ここにひとつ自分なりの解釈を加えると、こんな感じだ。
アート  明、白
   ↓↑
デザイン 暗、黒
ま、どっちが白でも黒でもいい。
はっきりしていることは、このアートとデザインは両極端であるけれど、その間はグラデーションでつながっているということだ。
真ん中はグレーということになる。明るいグレーならアートの面は強くなるがデザインでもあるし、暗いグレーならアート性は重視されないデザインだ。
個人的にはそれほど厳密に分けなくてもいいのではないかと思っている。
おもしろかったのは、ゲストの4名全員が「アート」という作品を作りたいかというと作りたくないと言う。むしろ自己表現は苦手で、他人と協力してひとつのものを作り上げていく方が好きなのだそう。
これはなんとなく分かる気がするな。少なくとも、なにかモノを作る仕事の人は「コミュニケーション」が仕事だからだ。