ここに描かれている日本は、
日本を愛するアメリカ人が見た日本、といったところか。
外からの眼で眺めた日本は、普段感じている日本とは違う。外国人のフィルターを通した日本は、どのように見えるのか、どんなところが魅力的なのか、日本人ではなかなか意識できない部分が多く出てくる。改めて指摘されて、はっとすることがよくあった。
例えば日本家屋については、日本の家の場合、一番大事なことは改造、建築など技術的なことではなく、空間の使い方をどうするか決めることだという。日本人としては感覚的にそうだろうと分かっていても文章としてはなかなか出てこないだろう。少し面白い部分を抜粋してみる。
アメリカとヨーロッパでは人の家にはトイレとキッチン以外にはほとんど使いませんが、日本は完全に蛍光灯に汚染されてしまっている。
照明の戦略上大事なことの一つは「下からの照明」。
いかに素晴らしい民芸品であろうと、それを入れるより何も置かないほうが家はより美しい。
「Empty Room(空の部屋)」精神。
こういうことを言えるのは、外からの眼だからこそだと思う。日本の文化の特徴も分かりやすく文章化している。
「瞬間」に集中するのは日本文化の特徴。
「序・破・急・残心」、日本のあらゆる伝統芸術の下に流れている。
日本ほど精密に洗練された伝統芸術は世界に類がない。
書と踊りは一緒だ。
純日本的な美術や建築は必ずものの配置をずらしたり、バラバラになったりしています。
日本人の自由な配置感覚にも独特の芸術性があります。
こうした言葉が、著者の体験の中から導きだされている。著者が日本を愛していることが伝わってくるし、だからこそ失われていく日本の文化や風景を見て悲しくもなるようだ。
時間の流れを押し戻すことはできないから、仕方ないことかもしれないが、日本の方法は受け継いでいきたいものだ。
そのためには、意識して方法を使っていかなければならないだろう。無意識のうちにも受け継がれていくものはあるが、それだけでは足りない。だから、著者のような「外の眼」をもって方法をとりだしていきたいと思う。そういう意味で参考になる本だ。失われゆく日本文化を悲しんだり懐かしんだりしているだけでは、本書はもったいない。