これまで「アートディレクター」という視点は、ほとんど学んだ覚えはなかったので、かなりベタな選択かとは思ったけど、なにを学ぶにしても基本は大切なので思い切って手にとってみた。
電通がだした本のため、電通色に染まっている。
それはそれで考え方としては、これが「王道」なんだろうな。
何名かの電通のアートディレクターの共著になっている。
ブランド、プロモーション、映像、パッケージなどのテーマごとにアートディレクターが語る。実際の仕事例をあげながら、その結果にいたった思考のプロセスを描く。
論理的な考えのもとに感覚をとぎすませてビジュアルを絞り込む。
そのプロセスから方法をさぐるように読まないと、お仕事紹介のような読み物になってしまうだろう。
気になったその方法を一部とりだしてみる。
多少いいまわしは、組み替えている。
・いい広告には目的と目標がきちっと整理されている。
・具体的なキャンペーンの成功をイメージする。
・「ブランドをつくる」ということは、企業や商品が本来もっている本質、目指す方向性を見つけ出し、それを最も適したスタイルでデザインし、定着させていくこと。
・ビジュアルアイデンティティの考え方として、ただマークをデザインするだけではなく、そのマークのむこうでどのように振る舞うか、全体を通してその企業・組織を明快に識別できる情報と成り得るかという中・長期ビジョンを構築することが大切だ。
・普通じゃないメディアの使い方をすればするほど、ビジュアルアイデンティティに対する意識が重要になる。
・あらゆる情報が凝縮されたシンボルは、シンプルであればあるほど、そのなかに楽に入り込み、深く印象に残るものになる。
・強い広告のためには、いろんな分野の人が集まり、各専門性を活かして企画を一本化すること。そこにアートディレクターがその「仕組み」と「表現」を一緒に考える必要がある。
・キチンと視覚的な設計がなされたキャンペーンだけが、人のココロを振るわせる。
・世の中とどう関わって、何をメッセージしたいのか意志をもつ。
そのアイディアの本質を探り当て、多くの人を動かすための具体的なビジュアルをつくることも必要。
・コミュニケーションはシンプルなほど、ぶれなくて、強い。
・アートディレクターに必要な能力、それはビジュアルアイディアの「ひらめき」、豊かな発想力でたくさんのアイディアの山を築くこと、アイディアをゴールイメージへと定着させるためのデザイン力とセンス。
ざっと書き出しただけでも、だいたい言いたいニュアンスは共通していると感じた。
それは「イメージをマネージする」ということにつきるのではないか、と。
アイディアの立て方からそれを定着させるまで、広い意味でイメージをマネージしていく、それには勇気も必要だろう。
すべての企画が成功を約束されるはずはないのだから、決断には不安と恐怖は多少なりともつきまとうのは当然だからだ。
読みやすいので、ざっと目を通しておいて損はない。