デザインの語源は計画していくこと。
計画するには、規則や法則といったルールがないとまとまらない。
そのルールこそデザイナーが知っておくべきことだし、ルールがあるからクリエイティブになれると思う。
デザイナーでもある著者の経験や体験から得た「デザイン・ルール」を系統立ててまとめた内容になっている。その系統は以下。
1:まとまりをもたせる
2:変化を付ける
3:強調する
4:デザインのテクニック
5:色について
ここでいうデザインとは「グラフィック・デザイン」のこと。
基本的なことばかりなので、うまく読みとって要素をしぼれば、別の分野のデザインにも使えるかもしれない。
なんにでも言えることだけど、やっぱり
まずは、基本をおさえることが大切。
著者らしい主張がみえる部分をいくつか引用してみた。
●デザインが単なる趣味や自己表現ではなく、ビジネスとして成り立つためには、デザインを施したことによる「効果」がはっきり見えなければならない。
●プロとアマチュアの差は、1ミリ以下の単位の細部まで、きちんと整列させたり、揃えたりといった気配りがあるかどうか。
●グラフィックデザインの仕事は、いつでもまとまりを持たせる作業と、変化を付ける作用を行ったり来たりするもの。
●デザインとはより効率よく情報やメッセージを伝えるために工夫をこらすこと。これから制作するものがどんな目的で、誰に対して、いつ、どんな風に見せたいのかという交通整理をしなければならない。
●デザインをする立場の人は、伝えなければならない情報に、視線が速く正確に到達できることは考慮してデザインしなければならない。
●自分が感嘆した「面白さ」「美しさ」「楽しさ」「創造性」などを分析する作業が必要。
●自分の得意なジャンルでしか仕事ができないのは、デザイナーとしては半人前。どんなメッセージでも伝えることができ、どんな要求にも答えられるよう、常に引き出しをたくさんもっていること。
本文で特におもしろい例えでわかりやすく説明していたところは、
文章と図版を配置する時の注意点について。
まずデザインする紙面全体を「川」とする。
文章は「水」、図版は「石」。
水を分断する位置に石を配置すれば、水の流れは途切れてしまう。いつでもスムーズに川の水が流れるように紙面を設計すること。
たまに文章がどこに飛んでいるのかわからなくなる雑誌がある。たしかに、あれは読者の負担になってると感じるなあ。「石」を置きすぎたか、変なところに投げ込んだかで流れが乱れているといったところか。
「線」の特製については、うまく言語化されていた印象。
・線は、すでにある規則性を強調する、あるいはまったく規則性のないところにも規則性を作り出す。
・線は、視線の誘導と関連づけの機能も持ち、線が描かれている部分は、常に連続したものとして認識される。
そして、ざっくりと
「関連づけるための線」
「区切るための線」
と説明を結んでいるから読者としてはわかりやすい。
ルールとはいえ、感覚が重要になってくる要素もある。
代表的なものに「重心とバランス」。
バランスをみるコツは、紙面に配置する要素を「重さ」で考えるということ。重さというのは、その面積と色で決まる。ちょっとややこしいのは、「色」を実際の素材の色としてではなく、グレーに置き換えたときにどう見えるかということ。
例えば文字で言えば、大きくて太いほどグレーの色は濃くなり、さらに文字色が黒に近いほどグレーの色が濃くなる。
画像や図版も同様だ。色が濃いものはグレーも濃くなる。
これらをすべて頭の中でシミュレーションし、天秤にかけるようにバランスをとっていく。面積は大きいほど重くなり、グレーの色も濃いほど重い。
人の目には上下方向よりも、左右方向の重心が意識されやすいということも考慮するといい。
全体的にすっきりと分かりやすい構成になっていて、専門用語もちゃんと解説されている。最後に、著者がこの本に込めた思いを前書きから引用しておこうかな。
ここには「デザイン」という言葉から連想される華やかさはないかもしれません。
でも、これらのルールを知ることは、あなたの作るデザインの土台となり、
作品のクオリティを大きく変えることでしょう。