日常

『日本デザイン論』

間

日本デザインの方法を知りたい。
感覚的なものではなく、しっかりとした「方法」として。
本書は、著者がワシントン大学での英文講義ノートがもとになっている。
英語は論理的な言語でもあるので、一般的に日本人が考える日本文化論とは違った論理的な解説が期待できると思って手にとった。それこそちゃんと「方法」として説明できなければ、外国人大学生が理解できないはずだし。
英語表記もところどころに挟み込まれる。日本語と英語、並べて読んでみると、なるほどニュアンスがしっかりとイメージできるようだ。
著者の考え方が表れている一文が以下だ。
「西洋の文化の伝統のなかで育て上げられてきた心理へのアプローチの方法、とくにその分析的な方法をわが国の文化に適用することによって、私たちの伝統的な発想の仕方だけでは見いだすことができなかった側面が、あざやかに切り出せるのではないか」
このアプローチはなかなか、いい。
こういうことを積極的にやっていかないといけないんだろうと思う。
その考え方の例をいくつか。
まず【直線の変形(curved line)】という考え方がある。
直線と曲線の話だ。
西洋の考え方でいくと、直線と曲線は質的にも本質的にもまったくの相違として捉えられているようだ。
それが日本では、本質的には不定の線を母体として力によって産み出されたものと理解される。言ってしまえば「曲線は直線のバリエーションにすぎなかった」という。
【灰色の空間(pivot space)】
軒のことだ。
軒下空間は、内部空間、外部空間のいすれに属するともいえるし、いずれにも属さないともいえる、きわめて曖昧な空間だ。
日本家屋では、この空間があったからこそ、内部空間にいながらも、外部空間とも親密な関係を持ち続けることができたのではないかと考えた著者。
内部と外部をつなぐ扇の要のような空間ということでpivot spaceと呼ぶのだという。
【天地人(esthetic triangle)】
それぞれ形のちがった三つの要素を使って三次元的に動的な調和をとる技法。対するシンメトリーは静的で二次元的なので、その違いはあきらか。
主題をあらわす「天」とバランスを保つ要素としての「地」「人」。基本的に三つの要素として捉えることができれば、そのエレメントは4つでも5つでもいい。
「天地人によってつくりあげられる構成には、これが最高であり、理想的だというものはない。その形は常に過渡期であり、常に未完成である。未完成であるがゆえに、後から新しい因子が加わることを決して拒まない」
この空間配置の美学は、かなり日本的で今でも応用の利くいい方法だと思う。
こうして日本文化の特徴を英語で表記する、外国人に英語で伝えるという試みはもっとあってもいいし、日本文化を理解するために英語で考えてみるという方法をとってみるのも大切なことだと感じた。
なんだか遠回りのようだけど、案外近道なのかもしれない。