日常

『形とデザインを考える60章』

著者は大学で「構成学」を扱っている。造形に共通する「形」を扱う専門領域だ。
著者の主張は、こうだ。
人口の形には、機能を無視した形や流行に流された形も多い。
が、自然の形にはその素材の機能を活かした形が必然的につくられて、機能美が存在していて美しい。
どうやら昔から日本人は自然との巧みな調和感覚をもっていたようだ。ジャポニスム・ブームを引き起こしたその形には、フラクタルの美学を内包し、黄金比のような数理的美学も存在していたことが解明された。
こんな導入から、ポスター誕生には浮世絵の影響が強かったこと、西洋絵画に与えた「余白の美学」、日本独自の表現である「斜線の美学」などなどジャポニスムの形を読み解いていく。西洋と東洋の思考の違いからくる形の捉え方を比較しながら描かれていて、説得力がある。
そのほかにも、アールヌーヴォー、アールデコ、シンメトリー、ポスト・モダンなどの用語で章が細かく分かれているのでサクサク進む。
世界に溢れる形から、良い形を見極めるためには、感性やセンスを磨き続けることが大切だと締めている。努力して美しい形、よいものを見続けなければ、感性はすぐにも劣化してしまうそうだ。まずは、よいものを繰り返しみる。そして、なぜ美しいのかを口頭で説明できるように訓練することで、感性・センスは磨かれていくという。
昔からよく言われてきたことだが、やはり、基本的なことを意識して繰り返していかなければ審美眼を磨くことはできないようだ。
形を見て説明するときに、本書はそのガイドとして使うことができそうだ。