見事な題名。
この題名につられて買った人も多いんだろうな。
恋愛うんぬんとかモテ術(?)みたいなものではなく、ノンバーバル・コミュニケーションに的を絞った本。
メッセージを伝えるうえで、言葉による伝達であるバーバル・コミュニケーションよりも、言葉以外による伝達「ノンバーバル・コミュニケーション」のほうが伝達力があるという。
心理学が示す調査結果では、人間が情報を伝達する中で話す言葉の内容のそのものが示す割合は、7パーセントにすぎないのだとか。残り93パーセントは非言語コミュニケーションが占めるため、ざっくりと「人は見た目が9割」ということになる。
ちなみに、非言語コミュニケーションのうちわけは
「顔の表情:55パーセント」
「声の質、大きさ、テンポ:38パーセント」
となっているようだ。
著者いわく、
「人を外見で判断しても、基本的には問題ない。ごくまれに、例外があるのみである」
ここで、誤解してはいけないのは「ルックス」や「アピアランス」のことのみを「外見」と言っているのではないということ。動作などをひっくるめた「外見」だ、ここをしっかりしないと「なんだ、やっぱり外見かよ!」というイヤなやつになっちゃう。
他人から受け取る情報の中で、一番嘘をいわないのは何か、ということを調べた動物行動学者デズモンド・モリスの調査結果が例として載っていた。信頼できる順に
1:自律神経信号(動悸や汗) これは他人がチェックできない
2:下肢信号(足の動き、貧乏ゆすりなど) ここから下がチェック可能
3:体幹信号(身体の姿勢)
4:見分けられない手振り(微妙な手の動き、指とか)
5:見分けられる手のジェスチャー
6:表情
7:言語
他におもしろいと思ったことにも少しだけ触れていくと、
●縄張りの中にずっといたがる人物は自信がない
部長などの管理職が言う「○○君、こっちにきたまえ」
自分が歩けば済むこともイチイチ呼び出す。威張っているようで、これ、実は実力がない証拠。
仕事に自信を持っているリーダーは、スッと部下の席までいく。縄張りの中で自分の権威を守るより、部下の能力を引き出そうとする。
自信があるから、人やトラブルに遭うことを恐れない。
●人間は、前髪をたらすと3~4歳は若くみえる
●額をきちんと見せている女性はキャリア思考が強い
恋愛・男女関係にもおもしろいものがいくつか
●女の「潤んだ瞳」という公式化されたテクニック
演劇、マンガ、一般的にも多用されるテクニックらしいけど、男の側にはこうした公式化されたテクニックはないそうだ。
●シンクロニー傾向
打ち解けた親しい相手には、手の動きや、姿勢、頷き方まで似てくる。
これは、結構有名かな。
以上のような、ある程度公式化されたノンバーバル・コミュニケーションを意識的に活用しているのが演劇やドラマ。そのうち最先端の領域はマンガだという。
ところで、国際交流で重要なのはやっぱりジェスチャーだと思う。イギリス留学中、英語に自信がなくてもこれでなんとか乗り切れた。そんなノンバーバル・コミュニケーションの代表格でも、国や宗教によって異なってくるそうな。
が、だいたい通じるノンバーバル行動があるという。それは、
・親指をたてる=「よし」
・Vサイン=「勝利」「平和」「2」
・親指と人差し指で丸をつくる=「オーケー」「大丈夫」「穴」「ゼロ」
・人差し指を口にあてる=「静かに」
コミュニケーションの流儀も国によって違うので、国際標準的な上記のようなものは重宝されるのかも。
たとえば、大づかみに、
・ヨーロッパ流「相手に、わからせ、自分を通す」
・日本流「お互いに、語らずに、察する」
さらに日本の文化について著者は
「小さな空間に宇宙を、ほんの一瞬の時間に永遠を感じ取ろうとする傾向が日本人にはある」
という。確かに、俳句、短歌、能、茶室、浮世絵といった文化は魅力的だと思うし、とても海外がマネできるようなものではない気がする。
著者がマナーについて語っている部分があって、その考え方には納得できた。
まず、マナーとはノンバーバル・コミュニケーションを意識化したうえで、非常に洗練した形で練り上げた結果の産物であり、最低限、礼を失することのないようになっている。社会生活のさまざまな局面で、できるだけ相手に不快感をあたえず、かつスムーズに行動することにつながるので、マナーを守っているということは、相手に「あなたを尊重していますよ」というメッセージを発していることに他ならない。日本風に言うと「気配り」「心づくし」とでもいう単語になるのかな。電子辞書の英単語だと、「attention」「care」になるらしいけど、なんかニュアンスが違う。
とにかく、マナーは「文化度」であり、経済の豊かさの後にくるらしい。逆に言えば、マナーがなっていない人(会社)にはどこか余裕がない、という主張。
個人的には、経済の豊かさばかりではなく「精神の豊かさ」も関係してくると思う。だから、マナーのなっていない中高年をみると腹が立つというより、悲しくなるんだよなあ、情けなくなる、「いい大人が・・・」って。
「ノンバーバル・コミュニケーション力が高いと、たとえ仕事はできなくても、人生を豊かなものにできるのではないか」という著者の思いが感じ取れる。