9/14、JAGDA教育委員会セミナー「文字の先と端」の9月講座に参加。
全2回で今回は「西方式 / Blanding with Typeface」。
スピーカーは、デンマークのデザイン・プロダクション/コントラプンクト社のプリンシパル、ボー・リンネマン。
企業や国営団体のブランドを「文字」という基盤から構築していくコントラプンクト社の方法の一端を聞くことができた。
まず、ブランディングとはなにか、ということから話は始まる。
現在VIの定義の範囲は拡張され続けているという。だが、タイプフェイスとタイポグラフィを正しく運用すれば市場に対して強い影響を与え続けることは可能だ。
市場にあふれる同系列の企業との差違をつけること、差違を認識させること、それがブランディングであると語る。
客が一目で他企業と区別がつくようなものに仕上げなければブランディングとは言えないのだ。それには客の行動を知ることが不可欠。無意識の行動にまで自分の企業をアピールすることが望ましい。
それには、核となるコンセプト、アイディアを明確に持ち、環境、製品、コミュニケーション、経験にいたる隅々まで浸透させることが必要になるようだ。
良い例として、現在の米Apple社が紹介された。確かに製品、店舗、webサイト、CMにいたるまで隅々に「シンプル」というキーコンセプトがいきわたっている。そしてそのメッセージを容易に受けとることができる。確かにすばらしいブランディングだ。
ブランディングしていくうえで重要視するプライオリティのオーダーは、時代によって変わってきているそうだ。昔ではシンボルマークがトップにきていたが、今では以下のようになっているという。
1:Name
2:Type
3:Symbol
4:Colour
シンボルマークよりも名前のほうが長く認知されつづけているようだ。
ソニーやキャノンなんかをみると納得がいく。ただし例外はある。例として、アップルのリンゴマーク、ナイキのスウォッシュマーク、シェル石油のシェルマークというように多大な時間とお金をかけてブランドロゴを浸透させて成功して例もあるが、多くはないらしい。
おもしろかったのは、ブランドロゴなどに使われている色。なんと世界中のロゴの85%は青系統なんだとか。これは興味深い。青から連想されるイメージが世界の企業達が目指す方向性と一致したということなんだろうか。
人はブランドロゴを見るとき、ブランド名は読んでいない、ということも指摘。そのカタチを読んでいるのであって、文字は読んでいないのだ。偽物ブランドがよく使う手口で、それは明らかだ。「アジダス」「ニケ」など「アディダス」「ナイキ」のロゴ風にデザインされるとパッと見ただけでは騙されてしまう。
タイプフェイス・デザインで企業のブランディングをするときは、企業の意志が反映しているようなタイプフェイスをデザインしていくのが、いい。だれもがそのタイプフェイスを見ただけでどんな企業かが分かるようなものが。
つまり、企業のIDをタイプフェイスに込めていくことだ。
そのデザイン・プロセスでは、ベースとなるフォントは使わないのだという。コンセプトをカタチに落とし込んでいくときには、純粋に一から書き起こしてイメージを具体化していくそうだ。アルファベットのnとmのように似た形、エレメントを持つものはその中からキーとなるものを決めて作り込み、最終的にそのエレメント要素を他の似ているアルファベットに適用していく、というやり方でデザインを進めていくらしい。
そのデザインした文字が読みやすいかどうかを考えてキー・キャラクターから創っていくというプロセスがコントラプンクト社の定番のようだ。
そして、そのデザイン・プロセスでも重要なことは、クライアントと一緒にクライアント企業のフォントをデザインしていくことだという。
クライアントをデザイン・プロセスに巻き込み、クライアントと共にタイプフェイスを創りあげていくことが成功への近道なんだとか。それも、デザイン・コンセプトを決めるディスカッションなどの早い段階からデザイン・プロセスを共有していくということらしい。
もうひとつ、プロセス上で大切なことは、ひとつのプロジェクトにかかりっきりにならないことだという。一度プロジェクトから離れて客観的な目で冷静にデザインを詰めていくことも外せないポイントだそう。
デザイナーとしては、常にチャレンジすることが大切だと語った。同じことをリピートしていくことがデザイナーにとっては致命傷だという。
こうしてブランディングのポイントから、自信のデザインに対するこだわりまで話を聞くことができて、たいへん参考になった。いくつかの方法は実践させてもらうことにしよう。