10日の日曜日、青山ブックセンターにて『デザインのできること。デザインのすべきこと』刊行記念の著者・廣村正彰のトークショーがあった。
トークショーの相手はエディターの関康子。あえてデザイナーではないのは、客観的な視点がほしかったという廣村の思いゆえ。
関の司会進行っぷりはさすがにうまい。情報の組み立て、構造化が早いためか段取りがいい、さすが編集に携わっているだけある。
廣村の話も明快で、深澤直人、原研哉とはタイプがちがうように感じた。
デザインの方向性もまた違ったところに行こうとしているようだ。
一言でいうと「空間のV.I.」とでもいおうか。
空間に関わるグラフィックデザイン、このジャンルはこれから広げていけるのではないか、ということらしい。
2次元のグラフィックデザインが、サイン計画などの空間を意識することで、デザイン領域が3次元まで拡張する。そのサインが示す先にも、またサインが待っている、そしてその先にも。こうしたサインに従う者の時間を考える・デザインすることで、デザインの領域は4次元まで拡張する。
こうした考え方は、今までしてこなかったので新鮮だ。
平面のグラフィックデザインもまだまだ可能性がありそうだ。
それは「感覚」に訴えるものになるという。
これまでも意識されなかったわけではないが、紙の触感、光の反射など、もしかしたら匂いなんてのも考えられる。今まで以上に意識して取り組んでいくことが重要だな。
他にも、廣村らしさが感じられる言葉があった。
デザインには、そのまま残すものと留めてはいけないものがあるという。その見極めが大切で、ありのままの姿を次世代に繋ぐために「リファイン」という方法を使うこともあるのだとか。
こうした考え方は、プロジェクトの根幹に関わることであり、グラフィック技術の提供だけの関係ではない。スキルの提供だけではないプロジェクトへの関わり方こそ、本当のコラボレーションといえるのだろう。これから、いろいろと見直していかなければならないな。
田中一光から教えを受けた廣村、印象に残った教えとして「デザインは見立てである」というものがあるそうだ。これは「編集」という言葉に置き換えてもいい概念で、創作とは決してゼロから組み立てるものではない。経験など自分の引き出しにあるものを組み合わせて別の何かにしていくことだ。確かにその通りだと思う。編集とデザインは、そのプロセスにおいてかなり重なる部分が多いからだ。
このトークショーは、時々笑いに包まれるなど、廣村と関の人柄がにじみ出て暖かいものだったと感じた。この本もきっと買うことになるだろう。
2次元から4次元に拡張するグラフィックデザインという概念、自分でももう少し掘り下げて考えてみたいと思う。