2007年10月13日、東京ミッドタウンのデザインハブにて「ZUAN図案」という会が主催する講演会があった。講演するのはデザイン会社DRAFT、プロダクト製品でお馴染み「D-BROS」をスタートさせた宮田識。
フランクな語り口が聞きやすく楽しい講演だった。
事前に参加者からの質問を集めてそれについて講演するというスタイル。
体験談からくる実践的なアドバイスが多くてかなり参考になった。
まず、何をするにしても「腹を決めないとなにも始まらない」ということから。
宮田の場合は「自分に合う仕事だけをやる」と決めたそうだ。自分の生活に関係のある衣食住遊のみ、そこから選んでやる。そうして自分が選ぶということでクライアントとも限りなく対等の立場で仕事ができるようになるという。
「自分に合うかどうかで仕事を選ぶ」ことがポイント。それには常に自分がやりたいと思うことを周りの人にプレゼンテーションしておくことがコツなんだとか。マメにプレゼンしておくと、巡り巡ってやりたい仕事がやってくる、と。
では、実際のプレゼンとはなにか。
自分の考えや欲求をプレゼンするには「自分の意志」、自分の考えがなければならない。
他人を競争相手と捉えるのではなく、あくまでも「自分の考え」にこだわることが大切。そのこだわりを人に伝えることがプレゼンになる。思考のベースにあるのは自分の考えだということを強く言っていた。
それには自分を出す環境があるかどうかも大切になってくるようだ。確かに上司やクライアントから押さえつけられるばかりの環境しかないのであれば何もできない。
いいアイデアをだすためのコツも宮田流だった。
自分が新しくなれば、そこからでてくる考え方やアイデアも新しいものになる。
というものだ。決して流行のデザインを追うということではない。
やはりベースになるのは「自分の考え方」だ。常に自分が新しくなっていくことが一番で、それはデザイン面に限らずマナー、モラルなど自分の中にある問題だったりもするようだ。
宮田が考えるデザインの方法も披露された。
3つの思考を想定して、デザインを造り上げていくそうだ。
1:Philosophy 哲学 「思い・志」
2:Evidence 根拠 「明白な理由」
3:Benefit 利益 「特徴」
デザインで「特徴」をいくら打ち出しても「思いや志」「明白な理由」が伝わっていないとどんなに良いデザインでも心に残らない、ということだ。特徴ばかりを叫んでも、志を伝えなければ消費者は聞く耳をもたない。
この3つを意識してデザインを進めていく、ブランドを展開していくということが本当のデザイン行為だという信念は気持ちいい。
こうして言語化しておくとすぐにでも実践にとりいれることができる。
流行の賞をとるためのデザインとは、根本的に違うことが分かる。
最後にこれからのデザイン界はアートディレクターこそおもしろいと語った。
いろんな職種をたばねてディレクションし、トータルにデザインを進めていけるデザイナーが今まで以上に重要な存在になっていくだろうと締めくくった。
ただ視覚要素をつくっていくだけのデザイナーは、本当のデザインをしていないということなんだろう。
根本的な何かを問い、答えをだしていくという力は自分の考え方をしっかりと持っていないとできないことだ。表面的なデザインの技を磨くのもいいが、思考そのものをアップデートしていく必要がある。
宮田も考えれば考えたぶんだけ思考がリンクして物事がクリアになっていくと言っていたしな。
生活文化を提案できるデザイナーをめざそう。