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『視覚の文法』 | Crunchlog
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日常

『視覚の文法』

木
視覚に関わる能力「ヴィジュアル・インテリジェンス(Visual Intelligence)」について語られた本。VIという。IQやEQなどとならぶ知的プロセスとして認識して研究されている成果がつづられた。知覚システムにかんしては、まだまだ分かっていないことだらけらしい。 視覚は、単なる受動的な知覚ではなく、能動的な構築作業をともなう知的プロセスで、普段、見ているもの感じているものはすべてVIによって構築されたものだ。 という徹底的な姿勢がきもちいい。 つまり、VIは、目から入ってきた情報にもとづいて、世界を組み立てているということで、VIを刺激するような情報を作り出せれば、バーチャル・リアリティはリアルに近づく。脳に適切な情報を送り込めば、リアルにさえなりうる可能性はある。 そもそも、この世界がVIによって構築されたもの、脳が生み出したものだとすれば、バーチャル・リアリティとリアルの区別なんて意味があるのかどうか、あやしい。 視覚はたいていの人にとってかなり身近なものだけに、これがかなりややこしい。 視覚を語るうえではまず前提とする考え方を明確にしないと、語れない。ここでどんなスタンスをとっているかというと、 「あなたの見たもの」というときに2つの意味があるとしている。 1:現象的な意味   どう見えるか、視覚的にどう映っているか。 2:関係的な意味   見ている対象物そのもの。 たいていの場合、この二つは同時にいうことができる。まれにそうともいえない場合がある。例えば、アルコール中毒患者は、室内にピンクのキリンを見たという。ただ、実際はそんなものいるはずもない。この患者は現象的な意味では、キリンを見ているが、キリンはいないので関係的な意味で見ているとはいえない。 著者は、視覚に関する法則を「視覚的情報処理の法則」とよんでいる。 視覚的シーンは、たった一つのステップではなく、何層ものステップを踏んで構築される。基本的にはそれぞれのステップは、前のステップによって決定され、前のステップで得られた結果を出発点としている。 こうした基本的な考え方を出発点として、視覚にかんする法則を解いていくのは爽快感を感じる。その法則というものが、1行、2行の簡単な法則がいくつも相互作用して視覚を構築しているというから、驚き。 意識しないでやってのけている脳は、かなりすごいことをしているんだと関心してしまうけど、どれか1つでも視覚法則を処理できなくなっただけでたいへんなことになるだろうという怖さも感じた。 住んでいる空間世界は三次元だ、当然。 が、眼に入ってくる情報はすべて二次元の像だ。ということは、奥行きを見る必要があるときは、必ず三次元への構築が行われている。 この二次元というものがやっかいもので、二次元からは無数の三次元解釈ができるらしい。 では、なぜ日常的に一定の三次元空間として観ることができるのか。 ここに法則が関わってくる。 奥行きをいきあたりばったりに構築しているわけではなく、ちゃんとした法則にのっとって構築している。つまりVIは、法則を満たす三次元世界のみを構築し、それ以外の三次元解釈は無視してしまう。 VIは偏見に満たされたフィルターとして自動的に機能している。 こういった大前提は大切な部分で、この部分にかなりページ数をさいている。 そしていよいよ法則そのものの解説にはいっていくわけだ。 ここからは一気に読めるとおもう。 いわれてみれば、そうか。というほど簡単な法則にまとまっていたりするから拍子抜けするかもしれないけど、それらがすべて相互作用していることを考えると、なんともよくできている。 例えば、 法則1:図中の直線はつねに、三次元空間内においても直線であると解釈される。 法則6:可能な部分ではすべて、図中の曲線を三次元の表面の縁だと解釈する。 法則10:できるだけなめらかな、三次元の表面を構築する。 法則14:凹の折り目に沿って、物体を各部分に分割する。 法則19:各部分の境目が目立つほうを、図とする。 法則21:図中の色相、彩度、明度の段階的な変化は、光源の変化だと解釈する。 法則28:視野中の最も明るい部分を、白または「超白」ないしは「自己発光部分」と解釈する。 ここまでは、空間も色もVIが構築したものということで展開されてきたが、これに「時間」が加わることになる。 三次元の空間を構築し、その空間内の動きも構築しているという。 ということは、出来事の時間的な流れも構築していることになり、空間と時間は、ある意味では同じ基盤の上に立っている。 映画やテレビが静止画の連続で見せられていることがいい例か。 法則29:できるだけ単純な動きを構築する。 法則33:もしそれが可能で、他の法則もそれを許す場合には、画像の動きを、三次元の剛体の動きを投影したものだと解釈する。 さらに著者の主張は続き、 「見るもの、聞くもの、嗅ぐもの、味わうもの、触れるものすべてが、あなた自身の構築したもの」だという。 ここまでくると、恐くもあるしかなりエキサイティングなものでもあると思う。 科学と哲学の境界は混ざり合ってしまい、適切な情報をつくりだすことができるようになれば、様々なことに応用・悪用できる倫理的な問題もでてくるだろうし。 まだまだ研究段階だし、多くのことが謎のままなんだろうけど、この分野はかなりおもしろくなりそうだ。

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