日常

『造形思考』

この本は以前から読んでみたかった本だった。ただ、古書としても高いし、手に入れる機会もなかった。たまたまネットで検索してみたら程度のいい古書で、市場価格として妥当な値段で売っていたからすかさず手に入れた。
それにしても古典を読むのは、なかなか疲れるんだな。言語体系やら言葉使いやらが今とはかなり違うからだろうけど、読破するのに時間がかかった。
クレーが造形を方法としてとらえ、そのプロセスをデッサンや図解とともに語っている貴重な書籍だ。
ただし、読みにくい。クレー独特の言い回しや単語感、概念などがいちいちひっかかる。普段はデザイン関連の用語、言い回しに慣れているだけに、抽象的な概念や哲学的な言い回しをされると理解するのに時間がかかる。かなりの頭脳労働だ。
自然と人工、二元論の統一など「概念を視覚化」する方法を描いている。クレーは「造形論は、形態(フォルム)に通じるさまざまな過程を論ずる。」としていて、方法を重要視していることがわかる。とうぜん現在のデザイン言語などでは語ってくれないので、クレーの概念を租借する必要がある。
「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、見えるようにすることにある。」という主張はデザインにも通じると思う。さらに「作品を鑑賞する側にとっても、最も大切なのは、時間である。」と、視線の動きをコントロールすることの大切さにも言及していた。
日本的な思考と思われる部分もあった。「客体と主体の関係はとりかえられる。主体と客体の対決こそ、絶対的な統一を生む。」というのだ。ダブルスタンダードをよしとする日本文化にはなじみやすい考え方だと思う。
「すべての造形は運動である。」というクレーの言葉通りに、広い意味でとらえた「運動」をキーワードに読み解いていけば、多少は楽かもしれないな。クレー独特の素描や図解は見る価値ありだ。
造形思考 (1973年)

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