日常

『ふすま』


本書は文庫版として再刊行されたものらしい。青山ブックセンターでデザイン関連書のコーナーで見かけたのが最初の出会いだった。とくにデザイナーとして尊敬している原研哉の推薦の言葉が帯に書いてあったのが印象的で手にとったのがきっかけ。
パラパラめくってみると、ふすまという日本古来からのプロダクトデザインを通して、日本デザインの方法に迫っていたので思わず買い込んだ。
著者の向井周太郎は経師、表具師である父に影響されてか「ふすま」にたいする思い入れは相当なもののようだ。その情熱は文章から伝わってくる。
ふすまの「ふす」が「伏す」や「臥す」に由来するといった語根を巡る考察も説得力があった。
ふすまを、日本文化における空間意識の深層を考えるうえできわめて示唆的なもの、
そして住居は、それを生みだした民族の捉え方や自然の見方を映すひとつの宇宙観のモデルだともいう。
ふすまや障子の透明性にみる「すき」「さわり」は、日本の文化に根ざす古来の空間概念。
「さわり」は奥への視界をさえぎり、神の座を奥深く隠し守るという意味であり、日本では「奥」を設定することによって比較的狭小の空間をも深化させることを可能にしてきた。
この空間概念は何々に役立つという機能的な見方からではなく、何々から成り立つという構造的な見地から生まれてくる。日本の空間は「間」から生じるというわけだ。
たしかに日本の住居の部屋は、本来機能的に固定されていませんから、可変性や転用性に富み、多くの目的に使用できる。
伝統的な日本家屋は部屋部屋がふすまによって仕切られた、すべて等質な空間であることによって転用性や可変性に富んでいるから、同じ構造システムから生まれた押し入れや戸棚も、使用目的のうえではたいへんフレキシビリティがある。
興味深かったのは、日本最古の庭園書『作庭記』から抜き出した日本の方法を語っているところだ。以下にまとめてみる。
●筋変えて
 景観を構成する「筋」を「たがい違い」「入れ違い」にすることで、これを是とする左右非対称の構成法。アンスタビリティ。
●引き違え
 同じ種類の動作などが互いに交差する
こうした思想が活きる背景には「違い」のニュアンスがあるという。
「違い」のニュアンスは、欧米と日本では違っているそうだ。
日本語の「違い」は「たがい違い」「入れ違い」で相互に関係しあっている。類似のなかの差違。
欧米では、「区別をつけること」「離れていること」というそれぞれの個の違い、そのアイデンティティを主張すること。
だからこそ、日本では個を主張するのではなく、寛容さが含まれた「違い」の思想が生きる「間」を重んじているそう。
例えば、間仕切り襖の「引き違い」による開閉作用が重層的な空間のひだや陰影の階調を創り出し、空間の奥性を想像させる働きをしている。
具体例などを織り交ぜながら、方法論を検証していく本書は日本のデザイン論という視点で読んでも参考になることは多かった。
向井親子の対談も収録されている。ただ、ここで「親子」という枠でくくるのは違うのかもしれない。この対談は「プロ論」になっていると感じた。仕事をしていく上での「心がけ」というか「心得」を語っている部分が目立った。
気になった部分だけ抜き出してみた。
●全体が調和することをお互いの目標に、そのなかで自分がどのように技を提供していけばよいのか、その兼ね合いをきっちりと見きわめながら行うというそれぞれの仕事が大切。自分の技を単に誇示するような仕事は必要ない。
●伝承された技術とか常識とされるものや習慣化されたものを、本当に妥当かどうか、常に見直していく必要がある。そうでなければ、伝統技術であっても、その時代の新しい質や価値は生まれてはこない。
●専門のなかで自分でなければできないという固有の技術なり特質を生み出していく必要がある。その時代の社会や生活の中でのひとつひとつの工夫や創意がやっぱり大切だ。
これらのことは、どんな職業にもいえることではないかと思う。
日本デザイン論からプロ論まで、読む側の視点によって、多くのことが得られる本。

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